自由空間伝搬損失計算機(FSPL)の使い方
自由空間伝搬損失計算機では、送信側と受信側の距離、電波の周波数を入力して、理想的な見通し環境における自由空間伝搬損失(FSPL)を求めます。距離と周波数の単位を選び、実測値または設計値を入力してください。結果にはFSPL(dB)のほか、式で使用したkm・MHzへの換算値と計算手順が表示されるため、無線リンクバジェットの確認や設計資料への転記に便利です。
距離と周波数は必ず正の値で入力し、対象とする無線リンクの条件にそろえます。たとえば、Wi-Fi、ローカル5G、マイクロ波回線、衛星通信のいずれでも、周波数が高くなるほど、また距離が長くなるほど自由空間伝搬損失は大きくなります。同じ距離でも周波数を2倍にするとFSPLは約6 dB増え、同じ周波数で距離を2倍にしても約6 dB増えます。
この計算機の値は、まず理想条件での損失を把握するための基準です。送信電力、送受信アンテナ利得、ケーブル損失、受信感度、フェージングマージンを加えて、実際のリンクバジェットを評価してください。
自由空間伝搬損失(FSPL)の計算式と前提
**自由空間伝搬損失(FSPL)**は、障害物、反射、回折がなく、電波が自由に広がる理想的な空間での伝搬損失です。距離をkm、周波数をMHzで入力する場合の式は次のとおりです。
FSPL(dB)= 20 log10(距離[km])+ 20 log10(周波数[MHz])+ 32.44
同じ関係は、波長を用いて次のようにも表せます。
FSPL = (4πd / λ)²
ここで、dは送受信アンテナ間の距離、λは波長です。dB表記では距離と周波数の対数に比例するため、線形の値として見えるほど急激には増えませんが、リンク設計上は大きな影響があります。
自由空間伝搬損失は、アンテナ利得そのものや送信出力を含む値ではありません。また、屋内の壁、地面・建物からの反射、地形、樹木、雨、湿度、偏波のずれ、干渉による追加損失も含みません。特にNLOS(非見通し)環境では、このFSPLだけで受信電力や通信品質を判断しないでください。
自由空間伝搬損失計算機の活用例
自由空間伝搬損失計算機は、無線通信の初期検討、RF回路・アンテナ実験、通信方式の学習、リンクバジェットの概算に役立ちます。主な使い方は次のとおりです。
- Wi-Fi・ローカル5Gの設計 — 周波数帯やアクセスポイントまでの距離を比べ、基準となる伝搬損失を確認します。
- 無線回線・衛星通信 — 地上局や中継点の距離と周波数から、必要なアンテナ利得や送信出力を検討する前提を作ります。
- 実験・学習 — フリスの伝達公式、波長、周波数、距離の関係を数値で確認します。
- 設計レビュー — リンクバジェット表のFSPL項目を独立に再計算し、単位換算や桁の誤りを検出します。
安全性、電波法、免許、実運用の通信品質に関わる判断では、現地測定、法令、機器仕様、専門家の設計を優先してください。このFSPL計算は透明な初期推定として使い、実環境の追加損失と十分なマージンを必ず考慮しましょう。