ホーマン遷移計算機の使い方
ホーマン遷移計算機は、同じ中心天体を周回する2つの円軌道の間で必要となる軌道遷移を概算するツールです。中心天体、初期軌道半径 r₁、目標軌道半径 r₂を入力すると、遷移軌道の長半径、各噴射のデルタV(Δv)、合計Δv、遷移時間を確認できます。
軌道半径は、地表からの高度ではなく中心天体の中心からの距離で入力します。高度しか分からない場合は、天体半径を加算してください。たとえば地球の低軌道から高い円軌道へ移る場合、地球半径にそれぞれの高度を足した値を r₁ と r₂ に使います。
結果の第1回噴射Δvは遷移楕円軌道へ入るための速度変化、第2回噴射Δvは目標半径で円軌道化するための速度変化です。合計デルタVは両者の絶対値の和であり、推進系の初期検討や軌道力学の学習に役立ちます。
ホーマン遷移とデルタVの計算式
ホーマン遷移は、2つの共面円軌道を接続する楕円軌道を使う、基本的な二噴射の軌道遷移です。遷移軌道の長半径は次式で求めます。
aₜ = (r₁ + r₂) / 2
円軌道速度と遷移軌道上の速度を比較して、各噴射のΔvを算出します。
v_c = √(μ / r)
v_t = √(μ × (2 / r − 1 / aₜ))
Δv₁ = |v_t(r₁) − v_c(r₁)|
Δv₂ = |v_c(r₂) − v_t(r₂)|
合計Δv = |Δv₁| + |Δv₂|
遷移時間 = π√(aₜ³ / μ)
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| μ | 中心天体の標準重力パラメータ |
| r₁ | 初期円軌道の半径 |
| r₂ | 目標円軌道の半径 |
| aₜ | 遷移楕円軌道の長半径 |
| Δv | 速度を変えるために必要なデルタV |
前提条件と限界
この計算機は、中心天体だけの重力を考える二体問題、共面の円軌道、瞬間的な噴射を前提にしています。大気抵抗、重力摂動、有限燃焼時間、軌道傾斜角の変更、第三天体、打上げ条件はモデルに含まれません。
したがって、表示されるデルタVと遷移時間は初期検討用の理想値です。実際の衛星運用やミッション設計では、軌道解析ソフト、推進剤マージン、姿勢・通信・運用上の制約を含めて検証してください。
ホーマン遷移計算機の活用例
- 軌道力学の学習 — 円軌道速度と遷移楕円軌道の関係を数値で確認できます。
- ミッション初期検討 — 軌道高度を変えたときの必要デルタVと所要時間を比較できます。
- シナリオ比較 — 中心天体や軌道半径を変え、地球・月・火星周回での差を確認できます。
- 計算結果の照合 — 手計算や講義資料のホーマン遷移の答えをチェックできます。
ホーマン遷移計算機は、効率的な円軌道間移動を理解する出発点です。重要な設計判断には、この概算だけでなく、実際の軌道条件と専門的な解析結果を必ず用いてください。