斜め衝撃波計算ツールの使い方
斜め衝撃波計算ツールは、圧縮性流体力学における基礎式である θ–β–M 関係式を数値的に解き、指定された流速・偏向角に対する衝撃波角(弱解・強解)や下流状態を算出します。また、既知の衝撃波角から流体の偏向角を逆算することも可能です。
- 上流マッハ数(M₁)を入力 — 斜め衝撃波が発生するためには、流入条件が超音速(M₁ > 1)である必要があります。
- 比熱比(γ)を設定 — 空気の場合はデフォルトの
1.4を使用します。二酸化炭素(CO₂ ≈ 1.3)やヘリウム(He ≈ 1.67)など、対象の気体に合わせて数値を変更可能です。 - 計算モードを選択 — クサビ角度や幾何形状が分かっている場合は「偏向角 θ」、シュリーレン写真などの光学測定値から波角を得ている場合は「衝撃波角 β」を選択します。
- 衝撃波角(β)または偏向角(θ)を確認 — 偏向角を入力した場合は弱解と強解の2つの衝撃波角が出力されます。
- 離脱判定の確認 — 偏向角 θ がそのマッハ数での最大偏向角 θ_max を超えている場合、衝撃波が剥離(離脱衝撃波)する警告メッセージが表示されます。
- 下流マッハ数(M₂)と圧力比(p₂/p₁)の評価 — 計算結果パネルで、衝撃波通過後の静圧力の上昇比率や流れの加速・減速状態を確認します。
計算公式と理論解説 — 斜め衝撃波の基礎式
本ツールでは、斜め衝撃波の前後にわたるランキン・ゴゴニオ(Rankine–Hugoniot)関係式から導出される以下の θ–β–M 関係式および垂直衝撃波の基礎式を使用しています。
tan θ = 2 cot β · [ M₁² sin²β − 1 ] / [ M₁²(γ + cos 2β) + 2 ]
M₂² sin(β − θ) = (M₁² sin²β + 2/(γ−1)) / (2γM₁² sin²β/(γ−1) − 1)
p₂/p₁ = 1 + 2γ(M₁² sin²β − 1)/(γ + 1)
| 記号 | 意味・定義 | 単位 |
|---|---|---|
| M₁, M₂ | 衝撃波の上流(前)/下流(後)のマッハ数 | — |
| β | 衝撃波角(流入方向と衝撃波面のなす角度) | ° |
| θ | 流体の偏向角(クサビやランプの傾斜角) | ° |
| γ | 気体の比熱比 | — |
| p₂/p₁ | 衝撃波前後の静圧力比(下流圧力 / 上流圧力) | — |
任意の流入マッハ数 M₁ に対して存在できる偏向角には上限値(最大偏向角 θ_max)が存在します。偏向角が θ_max 以下であれば、一般に2つの解(弱解:小さな衝撃波角 β で下流 M₂ は通常超音速、強解:大きな衝撃波角 β で下流 M₂ は亜音速)が存在します。実際の空気力学現象では、背圧が非常に高い場合を除き、エネルギー損失の少ない**弱解(弱い衝撃波)**が自然に形成されます。
斜め衝撃波計算ツールの活用事例
- 超音速インテーク(吸気口)のランプ設計 — 多段ランプの角度を最適化し、離脱衝撃波を発生させずに段階的に流速を減速・減圧してエンジンへの供給効率を高める設計。
- 風洞実験・シュリーレン画像の解析 — 可視化画像から測定した衝撃波角度 β をもとに、実測の流れの偏向角や局所マッハ数・圧力変化を逆算評価。
- 超音速翼型(ダイヤモンド翼・ダブルウェッジ翼)の空力解析 — 前縁での斜め衝撃波と後縁での膨張波(膨張ファン)による波形抵抗(Wave Drag)および揚力特性の算定。
- 極超音速飛翔体の機首周り解析 — 衝撃波層内の圧力比や温度比を算出し、熱保護システム(TPS)に耐えうる熱流束を予測。
- 衝撃波管(ショックチューブ)および爆轟(デトネーション)の研究 — 斜めデトネーション波の通過角度がチャップマン・ジューゲ(CJ)条件を満たしているかの検証。
- 圧縮性流体力学・空気力学の学習・検証 — 教科書や論文中の θ–β–M 線図(衝撃波線図)の数値を手軽に数値計算で検証・復習。