熱抵抗計算ツールの使い方
熱抵抗計算ツールは、材料の幾何学的寸法(厚さ・面積)と物性値(熱伝導率)から、建築・設備・電子基板設計などで必須となる熱抵抗(R値)および熱流量(Q̇)を素早く算出できるオンラインシミュレーションツールです。
- 計算モードを選択する - 単一の材料プレートの熱抵抗を計算する場合は「単層の熱抵抗 (R)」、断熱材・石膏ボード・サイディングなどの積層構造には「多層構造の熱抵抗 (R)」、既に熱抵抗が分かっていて温度差から熱損失・放熱量を求めたい場合は「温度差 ΔT と R から熱流量を計算」を選択します。
- 寸法と熱伝導率を入力する - 各層の厚さ $d$ [m]、熱の通過する断熱面積 $A$ [m²]、および材料の熱伝導率 $k$ [W/(m·K)] を入力します。(例: グラスウール 0.04、EPSフォーム 0.036、コンクリート 1.7、銅 400 W/m·K)
- 計算結果を確認する - 総合熱抵抗 $R$ [K/W]、単位面積あたりの熱抵抗 $R” = R \cdot A$ [(m²·K)/W](建築業界で広く用いられる熱抵抗値・RSI値)、および定常熱流量 $Q̇$ [W] が自動的に算出表示されます。
- 表面熱伝達率(対流・放射)を加算する - 壁体全体の熱貫流率(U値)を計算する場合は、室内側($h_i \approx 8\text{ W/(m²·K)}$)および室外側($h_o \approx 25\text{ W/(m²·K)}$)の表面熱伝達率を、等価な空気層($k = h \cdot d$)として追加計算してください。
公式と理論 - 熱抵抗計算
熱抵抗計算ツールでは、定常一次元熱伝導における以下の基本物理公式を採用しています。
R = d / (k · A) (単層構造の熱抵抗, K/W)
R_total = Σ R_i (直列多層構造の合成熱抵抗, K/W)
Q̇ = ΔT / R_total (定常熱流量・放熱量, W)
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| d | 材料の厚さ | m |
| k | 材料の熱伝導率 | W/(m·K) |
| A | 熱伝導の流路に垂直な断面積 | m² |
| ΔT | 層構造の両端における温度差 | K または ℃ |
| Q̇ | 定常熱流量(移動する熱量・電力) | W |
建築分野では、面積を考慮しない単位面積熱抵抗 $R” = d / k$ [(m²·K)/W](熱伝導抵抗)が指標としてよく使われます。本計算ツールでは断面積 $A$ も考慮することで、実際のワット数換算(熱流量 $Q̇$)まで一括で求めることが可能です。
代表的な材料の熱伝導率(k値)
| 材料名 | 熱伝導率 k [W/(m·K)] |
|---|---|
| グラスウール断熱材 | 0.035 ~ 0.045 |
| 発泡スチロール (EPS) | 0.030 ~ 0.040 |
| 硬質ウレタンフォーム (PIR) | 0.022 ~ 0.028 |
| 建築用レンガ | 0.60 ~ 0.80 |
| コンクリートブロック | 0.51 ~ 1.7 |
| 木材(針葉樹) | 0.12 ~ 0.14 |
前提条件と計算の制限事項
本ツールは均一材料における純粋な一次元・定常熱伝導を前提としています。接合面の接触熱抵抗や三次元的な熱拡散、経時変化(過渡熱応答)は含まれません。実際の筐体設計や保冷庫の計算では、接触熱抵抗シート(TIM)やヒートシンク熱抵抗、表面熱伝達率などを組み合わせて総合評価を行ってください。
熱抵抗計算ツールの主な活用シーン
熱抵抗計算ツールは、建築断熱設計からパワー半導体の熱対策まで幅広くご利用いただけます。
- 外壁・屋根の断熱性能評価 - 断熱材・構造用合板・内装ボードの積層構造における合成熱抵抗を計算し、省エネ基準(断熱等級)やU値ターゲット(例: $U \le 0.15\text{ W/m²K}$)の達成可否を検証。
- ヒートシンクとパワー半導体の熱設計 - 発熱素子(IC/MOSFET)からTIM(熱伝導シート)、ヒートシンク、外気までの熱抵抗ネットワークを積み上げ、半導体のジャンクション温度($T_j$)が許容上限を超えないか試算。
- 保冷庫・冷凍倉庫の熱漏れ計算 - ウレタンパネル等の厚さと熱伝導率から壁面からの熱侵入量を計算し、チラーや冷凍機の必要冷却能力(kW)を決定。
- 配管の保温・防露計算 - 温水配管や冷水配管の保温材厚さに対する熱損失を簡易算出。
- パッシブハウス・省エネ住宅シミュレーション - 異なる断熱材の組み合わせをコスト対効果で比較し、最適施工仕様を選定。
- 耐火区画の簡易熱解析 - 火災時の非加熱面温度上昇速度を過渡解析前の初期スクリーニングとして概算。
実際の熱移動には熱橋(サーマルブリッジ)や空気漏れも影響するため、適切な安全率を見込んで設計することをおすすめします。本ツールは、熱設計の確かな基礎データを提供します。