y+ 計算ツールの使い方
y+ 計算ツールは、CFD(数値流体解析)エンジニアや研究者が、選択した乱流モデルの要求仕様に合わせて壁面近傍のメッシュ(第一層厚さ)を適切に構築するためのツールです。
- 計算モードの選択 — 「y+ を計算」(既知のメッシュサイズからy+を求める)または「目標 y+ から第一層厚さ(y)を計算」(希望するy+値から第一層の高さを逆算する)を選択します。
- 流体物性値の入力 — 流体密度(ρ, kg/m³)および粘性係数(μ, Pa·s)を入力します(例: 標準状態の空気の場合は ρ = 1.225 kg/m³、μ = 1.789×10⁻⁵ Pa·s)。
- 壁面せん断応力の入力 — 予備解析や平板相関式から求めた壁面せん断応力(τw, Pa)を入力します。
- 距離または目標 y+ の入力 — 順方向モードでは第一層メッシュ中心距離 y (m) を、逆方向モードでは目標とする y+ 値を入力します。
- 計算結果の確認 — y+ 計算ツールが摩擦速度 uτ、計算された y+(または推奨第一層高さ y)、および一般的な乱流モデル基準に基づく評価メッセージを出力します。
計算式と理論背景 — y+ とは
本y+ 計算ツールでは、流体力学における標準的な壁面無次元距離の定義式を使用しています。
uτ = √(τw / ρ)
y+ = (ρ × uτ × y) / μ
目標とする y+ から第一層メッシュ中心距離 y を逆算する場合の計算式:
y = (y+_target × μ) / (ρ × uτ)
| 記号 | 意味 | 単位 |
|---|---|---|
| ρ | 流体密度 (Fluid Density) | kg/m³ |
| μ | 粘性係数 (Dynamic Viscosity) | Pa·s |
| τw | 壁面せん断応力 (Wall Shear Stress) | Pa |
| uτ | 摩擦速度 (Friction Velocity) | m/s |
| y | 第一層メッシュ中心距離 (First Cell Distance) | m |
| y+ | 壁面無次元距離 (Dimensionless Wall Distance) | — |
y+ の目安と乱流モデルの選定
| y+ の範囲 | 壁面近傍の領域 | 推奨される用途・適用モデル |
|---|---|---|
| y+ ≈ 1 | 粘性底層 (Viscous sublayer) | 低レイノルズ数型モデル(k-ω SST, Low-Re k-ε など)。壁面境界層を直接解像する場合に必要。 |
| 1 < y+ < 30 | 緩衝層 (Buffer layer) | 回避を推奨 — 粘性力と慣性力が交錯する領域であり、壁関数適用にも直接解像にも不向き。 |
| 30 < y+ < 300 | 対数領域 (Log-law region) | 高レイノルズ数型モデル(標準 k-ε など)。壁関数(Wall Functions)を使用して計算コストを削減する場合に適用。 |
| y+ > 300 | 外部領域 (Outer layer) | 対数則の適用範囲外。解析精度の低下につながるため注意が必要。 |
前提条件と注意事項
本y+ 計算ツールは、非圧縮性流体および平滑壁における発達した乱流境界層モデルを前提としています。可圧縮性の強い流れ、粗糙壁、強い逆圧力勾配を伴う剥離流などでは、より詳細な評価や補正が必要となる場合があります。
y+ 計算ツールの活用シーン
y+ 計算ツールは、CFD解析のプリプロセスおよび精度検証において幅広く活用されています。
- メッシュ作成・プリプロセス計画 — 構造格子(Prism Layerなど)の生成前に、目標とする乱流モデルに最適な第一層メッシュ厚さを算出。
- 乱流モデルの妥当性評価 — 現在使用しているメッシュが、意図した乱流モデル(k-ω SST や k-ε)の推奨 y+ 範囲を満たしているか確認。
- メッシュ適合・反復的メッシュ調整 — 予備計算で得られた壁面せん断応力 τw を本ツールに入力し、本計算に向けた第一層高さを微調整。
- 教育・研究用途 — 流体力学やCFDを学ぶ学生・研究者が、境界層の解像度と計算モデルの関係に対する理解を深める教材として活用。
- 解析品質保証(QA) — メッシュ統計情報を迅速に照合し、ソルバー設定に対するy+の適合性をダブルチェック。
学術研究から産業用CFDシミュレーションまで、y+ 計算ツールは壁面格子解像度の確保と計算信頼性の向上を強力にサポートします。