ボーア模型計算機の使い方
ボーア模型計算機では、原子番号 Z と主量子数 n を入力すると、軌道半径、電子速度、全エネルギー、および指定した遷移に対応する周波数と波長を求められます。
- Z を入力する - ボーア模型計算機で扱えるのは、水素様イオン(電子が1個だけのイオン)です。水素は 1、He⁺ は 2、Li²⁺ は 3 のように入力します。
- n を入力する - 主量子数 n = 1, 2, 3, … が軌道を指定します。n = 1 は基底状態で、n が大きいほど軌道は大きく、エネルギーは高くなります。
- 遷移を設定する(任意) - n₁ → n₂ の遷移を選ぶと、放出または吸収される光子の周波数と波長を確認できます。ボーア模型計算機は、その遷移が属するスペクトル系列(ライマン系列、バルマー系列、パッシェン系列など)も自動的に判別します。
- 結果パネル全体を確認する - 軌道半径、電子速度、全エネルギー、光子の周波数、真空中の波長がカード別に表示されるため、各値をコピーしたり、異なる n の準位を比較したりできます。
ボーア模型計算機の式と理論
ボーア模型計算機は、ボーアによる角運動量の量子化を用いて計算します。
r_n = (a₀ / Z) · n² (軌道半径)
v_n = (Z · α · c) / n (電子速度)
E_n = − (Z² · 13.6 eV) / n² (全エネルギー)
ΔE = E_n₁ − E_n₂ (光子エネルギー)
f = ΔE / h (光子の周波数)
λ = c / f (真空中の波長)
| 記号 | 意味 |
|---|---|
| a₀ | ボーア半径(5.29e−11 m) |
| α | 微細構造定数(約 1/137) |
| Z | 核電荷数 |
| n | 主量子数 |
| h | プランク定数 |
| c | 光速 |
これらの式は、水素様原子のスペクトルに見られる大まかな構造(ライマン系列、バルマー系列、パッシェン系列、ブラケット系列、プフント系列)を再現します。
水素原子のスペクトル系列
ボーア模型計算機は、各遷移を終状態の準位 n₁ によって分類します。
| 系列 | 下位準位(n₁) | スペクトル領域 |
|---|---|---|
| ライマン | 1 | 紫外 |
| バルマー | 2 | 可視光/近紫外 |
| パッシェン | 3 | 近赤外 |
| ブラケット | 4 | 赤外 |
| プフント | 5 | 赤外 |
たとえば、n = 3 → 2 のバルマーα(Hα)線は 656 nm 付近にあり、水素放電管で見える明るい赤色の線です。
前提条件と限界
ボーア模型は、円軌道、瞬時に作用するクーロン引力、無限大の原子核質量を仮定しています。水素様イオンの精度を高めるには電子の換算質量を用い、多電子原子には量子化学計算を使用してください。
ボーア模型計算機の用途
ボーア模型計算機は、原子物理学の基礎をすばやく明快に計算したいときに役立ちます。主な用途は次のとおりです。
- 水素様スペクトル - H、He⁺、Li²⁺ などの1電子系について、ボーア模型のエネルギーを使いスペクトル線の位置を予測します。
- プラズマ診断 - 実験室や天体物理プラズマにある高電離種の遷移エネルギーを見積もります。
- 物理の課題 - 教科書と同じ式を使って演習問題の答えを確認し、単位が正しく相殺されるかを確かめます。
- 概念のデモンストレーション - 軌道半径が n² に比例して増え、Z の増加に伴って小さくなることを示し、重いイオンほど原子が小さくなる理由を理解します。
- リュードベリ状態の学習 - n > 50 のように非常に大きな n をもつリュードベリ原子を調べ、古典論と量子論の対応が現れる様子を確認します。
- 第一原理的な概算 - 本格的な量子化学シミュレーションを実行する前に、ボーア模型を簡易的な妥当性確認として使います。
高精度の分光や多電子原子を扱う場合は、量子力学や NIST などの分光データベースを使用してください。ボーア模型計算機は、原子物理学の入門で学ぶ本質的な一次近似を扱えます。