LLM VRAM計算ツールの使い方
LLM VRAM計算ツールは、特定の推論設定においてローカルLLM GPUメモリ容量(VRAM)が足りるかどうかを即時に判定・計算するためのシミュレーターです。まずモデルのパラメータ数(十億単位 / B)を入力し、量子化(Quantization)されたチェックポイントの重み精度(FP16、INT8、INT4など)を選択します。例えば、8B(80億パラメータ)モデルをINT4で読み込む場合、FP16に比べてモデル重みのVRAM占有量は大幅に削減されますが、テキスト生成時のKVキャッシュ メモリ消費量はアーキテクチャ設定によって決まります。
手軽に試す場合はモデルプリセットをご活用ください。「Llama風 8B」プリセットは一般的な個人向けグラフィックボードでのテストに適しており、「Qwen風 14B」プリセットは中規模デンスモデルの挙動を確認できます。「Llama風 70B」プリセットを実行すると、大規模モデルが量子化 VRAM削減を行った後でも48 GBカードやマルチGPU、CPUオフロードを必要とする理由が分かります。また、「8B ロングコンテキスト」プリセットはモデルサイズを固定したままコンテキスト長を伸ばした際のメモリ増大を体験できます。
モデルのパラメータ選択後、コンテキスト長、バッチサイズ、Transformer層数、隠れ層の次元数(Hidden Size)、Attentionヘッド数、KVヘッド数を設定します。特にGrouped-Query Attention(GQA)対応モデルでは、KVヘッド数がAttentionヘッド数より大幅に少なく設計されているため、同等規模のモデルであっても長文生成時のメモリ消費が異なります。KVキャッシュの精度(FP16/FP8/INT8)や、フレームワークのオーバーヘッド・グラフィックス割り当てを考慮した「実行時バッファ割合(%)」も調整可能です。
計算結果エリアでは、モデル重み、KVキャッシュ、実行時バッファ、および合計VRAM使用量が分かりやすく内訳表示されます。また、LLM 動作環境 GPUの目安として、約8 GB、12 GB、16 GB、24 GB、48 GB、または48 GB超過のクラスを自動提示します。表示されたクラスは理論上の最小要件であるため、ディスプレイ出力や他アプリとGPUを共有する場合、あるいは大きなCUDAグラフを確保する推論エンジンを利用する場合は、余裕を持った上位GPUを選択することをおすすめします。
計算式と理論 - LLM VRAM計算
LLM VRAM計算モデルは、推論に必要なGPUメモリを「固定のモデル重み」、「シーケンス長とバッチサイズに応じて変動するKVキャッシュ」、および「実行時バッファ」の3つの要素に分解して計算します。パラメータ数は十億単位(B)、メモリ量はGiB単位で算出されます。
model_weight_vram_gib =
model_parameters_billion * 1,000,000,000
* (weight_bits / 8)
/ 1024^3
KVキャッシュは、Transformerの各層におけるKeyおよびValueテンソルを保存します。本計算機では隠れ層サイズとAttentionヘッド数から1ヘッドあたりの次元数を求め、層数・バッチサイズ・コンテキスト長・KVヘッド数・テンソル数(KとVの2つ)を掛け合わせて計算します。
head_dimension =
hidden_size / attention_heads
kv_cache_vram_gib =
layers
* batch_size
* context_length
* kv_heads
* head_dimension
* 2
* (kv_cache_bits / 8)
/ 1024^3
実行時バッファ領域は推論エンジンやCUDA環境によって大きく異なります。そのため、モデル重みとKVキャッシュの合計に対して設定された割合(デフォルト割合+最小保障値)を加算し、GPUメモリの全領域をモデル本体だけで占有できるという誤った前提を防いでいます。
runtime_buffer_gib =
max(0.5, (model_weight_vram_gib + kv_cache_vram_gib) * buffer_percent / 100)
total_vram_gib =
model_weight_vram_gib
+ kv_cache_vram_gib
+ runtime_buffer_gib
推奨GPUクラスは、推定合計VRAMを格納できる最も小さい定格サイズが選ばれます。合計値がそのクラスの90%を超える場合は「容量切迫」の警告を表示します。実際のローカル推論環境では、量子化メタデータ、カスタムカーネル、メモリ断片化(Memory Fragmentation)、PagedAttentionのブロック管理などで追加のVRAM領域が必要になるためです。
LLM VRAM計算ツールの活用事例
本LLM VRAM計算ツールは、自作PCやGPUサーバーでローカルLLMを運用する際の構築計画に役立ちます。例えば、8 GBのVRAMを搭載したノートPCやゲーミングPCで7B〜8Bモデルが動作するか検証したい場合、チェックポイントサイズと量子化 VRAM精度(INT4やINT8など)を入力することで、実際に動作可能かどうかを即座に確認できます。
また、長文コンテキスト処理(RAGや大規模文書要約など)を実験する際、コンテキスト長を8Kから32Kや128Kに拡張した際の影響を可視化できます。モデル重み自体は変化しなくても、KVキャッシュ メモリはコンテキスト長やバッチサイズに比例して急増するため、単一ユーザーのチャットでは動いていた設定が複数リクエストの同時並行処理(バッチ処理)でVRAM不足を起こす理由が理解できます。自宅サーバー(Home Lab)、小規模推論サーバー、RAGプロトタイプ構築、エッジデバイス選定において最適なローカルLLM GPUメモリ容量を見極めることが可能です。
さらに、Hugging Faceなどのモデルカードに記載されたアーキテクチャ情報を比較する際にも便利です。層数、Hidden Size、Attentionヘッド数、KVヘッド数を入力すれば、モデル独自のキャッシュ効率を事前に評価できます。Multi-Query Attention(MQA)やGrouped-Query Attention(GQA)を採用したモデルが、なぜ長文コンテキスト処理に有利なのかを直感的に把握できます。