持続可能成長率(SGR)計算ツールの使い方
持続可能成長率(SGR)計算ツールは、企業が追加の株式発行(外部増資)を行わず、現在の資本構成と収益性を維持したまま、内部留保(再投資)のみで達成できる成長率の上限を即座に試算・シミュレーションするツールです。
- 計算モードの選択 — すでにROEや配当性向がわかっている場合は基本モードを、収益性・資産効率・財務レバレッジまで分解して要因分析を行いたい場合はデュポン分析モードを選択します。
- 財務データの入力 — 基本モードでは当期純利益・自己資本・配当性向を入力します。デュポン分析モードでは売上高純利益率・総資産回転率・財務レバレッジ(自己資本倍率)および内部留保率を入力します。
- 通貨の選択 — 金額計算の表示を整えるため、必要に応じて通貨(JPY、USD等)を選択します。
- 結果の確認 — 入力と同時に持続可能成長率(SGR)および基礎となるROEや内部留保率が自動計算されて表示されます。
計算式と理論背景 — 持続可能成長率(SGR)
持続可能成長率の計算には、ファイナンス理論で標準的に用いられるヒギンズ(Robert C. Higgins)のモデルを採用しています。
SGR(持続可能成長率 %) = ROE × 内部留保率
内部留保率 = 1 − 配当性向
ROE(自己資本利益率) = 当期純利益 / 自己資本
また、デュポン分析を用いてROEを3つの要素に分解すると、どのような財務レバーが成長率を牽引しているかを詳細に把握できます。
ROE = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ
SGR = 売上高純利益率 × 総資産回転率 × 財務レバレッジ × 内部留保率
| 記号・項目 | 意味・説明 |
|---|---|
| ROE | 自己資本利益率(Return on Equity) |
| 内部留保率(b) | 利益のうち社内に留保・再投資される割合(1 − 配当性向) |
| 売上高純利益率(NM) | 売上高に対する当期純利益の割合(収益性) |
| 総資産回転率(AT) | 総資産を活用して効率よく売上を上げているかを示す指標(資産効率) |
| 財務レバレッジ(EM) | 総資産 ÷ 自己資本(負債の活用度) |
SGRは企業の「収益性」「資産効率」「財務レバレッジ」「配当政策」の4大財務戦略が一定であるという前提に基づいているため、企業経営の「自律的な成長限界」を示す重要なベンチマークとなります。
持続可能成長率(SGR)計算ツールの活用事例
- 経営計画・中計策定 — CFOや経営企画部門が、外部調達や希薄化(増資)を伴わずに達成可能な目標売上成長率の妥当性を検証する際に活用されます。
- 与信管理・格付分析 — 銀行や金融機関の審査担当者が、企業の売上拡大スピードが実力(SGR)を超過して資金ショートリスクが高まっていないかを分析します。
- 株式投資・銘柄分析 — アナリストや個人投資家が、企業の財務データから中長期的な利益成長可能性と配当持続性を試算・評価します。
- 配当政策の検討 — 取締役会が配当性向の引き上げを検討する際、内部留保率の低下が将来の成長率(SGR)に与える影響をストレステストします。
- 事業投資・設備投資の検証 — 財務部門が、計画中の設備投資資金を営業キャッシュフローと内部留保のみで賄えるか確認します。
- スタートアップ・中小企業経営 — 外部資金調達(ベンチャーキャピタルや借入)に依存せず、自己資金(オーガニック成長)のみで事業をスケールさせる限界を把握します。
企業財務担当者、融資審査員、投資家にとって、持続可能成長率(SGR)計算ツールは複雑な財務指標を「自力で維持できる成長限界値」として一目で評価できる強力なシミュレーターです。